うちには3人の子供がいましたが、特に長男は、毎年8月末に、確実に私の息の根を留めに来ました。
特に強敵、読書感想文。ああ、読書感想文読書感想文
今回はそんな読書感想文をとにかく書こう(中学生編)です。
高校受験を見据えた中学生のために書きました。
(小学生編は、リクエストがあればあらためて)
まずこれは、学校側にとってとても都合の良い宿題です。
「せっかく1ヶ月以上休みあるからなんか読んでほしい」「しかも確かに読んだことをなんとなく確かめたい」「できれば読む力だけじゃなくて書く力もつけてほしい」と考えると、それを一括で終わらせることができる、便利な課題なんですよね。
ほんとはここで「国語に必要な力とは何か」「受験業界ではどのような力が必要とされているか」とつらつら書きたかったのですが「いいから早く!あと3日!」となってると思うので、今回は実践編として先に書きます。
「なぜこれなのか」というのは後でまとめます。
とりあえず疑問や不満は置いといて、粛々と進めてください。
大丈夫。必ず、なんらかの力になります。
本の選定
まず、新たな本を読む必要はないです。
「何か一冊、読んだことのない本を読め」なんていう指定はないです。
お気に入りの本があるなら、それをもう一回読んでもいいです。
ただし、もう一度きちんと読み返させてください。
記憶を頼りには書かないこと。
「んなもん、あるかいな」という子。漫画は読みますか?
あるいは、アニメなら観ますか?
なら、ちょうどいいのがあります。
マンガのノベライズです。
「えっ、まんが?」と思ったかもしれませんが、マンガじゃないです。ノベライズです。
幸い、人気マンガなら、小説化したもの、アナザーストーリーがイマドキはたくさん出版されています。
好きな登場人物が話し、動くのを文字で追う。
これなら、できる子供は多いです。
解釈違いで「きいい」となるのも、まあそのまま経験しつつ読ませましょう。
それも感想文で語ればいいです。
感想文を書く上で一番大事なのは、それを読んで心を動かされた経験です。
「読んでみたけど、何が何かよく分からんかった」では無理です。
逆に、心を動かされたなら中学生が「ごんぎつね」でも全然いいと思います。
「えっ、でも、せっかく『罪と罰』読ませたのに!
それでごんぎつねなん?!」と悲痛な顔になってるお母さんもいると思います。
次の1行で解決です。
「この夏休み、私は『罪と罰』や『車輪の下』などさまざまな本を読みました。
でも、最も心を動かされたのは、久しぶりに読み返した『ごんぎつね』でした」
はい、「ちゃんと読んだんやけどね、あえてね、あえて、今回はごんぎつねで行きますよ」というアピールもできました。
これでとりあえず気持ちは治めてください。
もう一回言います。
感想を書くには、感想を持てる本でなければ無理です。
逆に、強く心を揺さぶられたのなら、「鬼滅の刃」や「進撃の巨人」で書くのが、その人にとっての「感想文」です。
内容
とりあえず書き出します。
書き出しに「私」は使わないとか、あらすじは書かないとかありますが。
それは、賞を取るためのテクニックで、今回はしゃらくせえ、とにかく目の前のますを埋めてこれを提出するんだ、のフェイズなので、そんな上級者セオリーは無視です。
とにかく書き始められた、という自信を持たせる。これが第一です。
「私は『題名』を読みました。
この本には『主人公』や『登場人物』が出てきます。
舞台は『時代』の『場所』です。
そこで彼らは『行動』をします。」
適度に改行をしつつ書けば、これで、200字くらいは埋まります。
「あ、なんか、埋まった」
これは、子供にとっては本当にホッとする実績になります。
続いて、こう書きましょう。
「私は、この物語でMVを作るならどういうのがいいかな、と考えてみました」
「えっ何を言い出した?」と思ったお母さん、とりあえず落ち着いて。
任せましょう。
物語の中で一番好きな場面を思い浮かべて。それを映像にして。
そこに、曲をつけさせるんです。ただし、日本語の、歌詞のある歌限定。
短いフレーズでもいいから、その好きなシーンを映像化して、そこに音楽をつけて、その歌詞をテロップでつけることをします。
「そんなんできるはずない」と思うかもしれませんが、
高確率でできます。ナチュラルに。
今の子供たちと、少し前の子供たちとの違いは、
「メディアミックスへの耐性」です。
前の世代は、情報を目から読む文字として受け取った。
ラジオ講座を聞くにしろ、テレビで英語講座を聞くにしろ、
そこには本のテキストとの密接なつながりがあった。
今の若者の大きな特徴は、「映像を、映像のままインプットできる」ことです。
YouTubeではさまざまな勉強コンテンツがありますが、テキストが付属されているものはほとんどありません(資格講座などはあります)
しかも子どもたちは、それをノートにとることもしません。「観流す」のです。
デジタルネイティブであり、動画ネイティブである現代の子どもたちは
「本を読まなくなった」とか「文字を読んで理解できなくなった」と言われますが、私はこれを劣化ではなく、新しい能力への進化であると感じています。
だから、本を彼らの言葉で翻訳しなおします。
アニメの主題歌、そのままでもいいです。
でも、そのどの歌詞が「刺さったか」を、それを聞くときにどの場面とリンクするのかを、彼ら自身に「メディアミックス」させるのです。
「私は、この場面を使います(場面の説明)
そこに、『アーティスト』の『タイトル』の歌を使います。
それはこんな歌詞です。(歌詞の引用)」
私のような国語教材の執筆者にとって、「著作権」は鬼より怖い存在ですが、
幸い、彼らにとって著作権なんて「はあナニ?それ食べられる?」です。
遠慮なく、じゃんじゃん引用しましょう。
ほら、どんどんマス目が埋まります。
「何やってんの? そんなこと意味あるの?」と思うかもしれませんが、めちゃくちゃ大アリです。
今、共通テストで大きく取り上げられているテーマが「複数テクストの読み合わせ」。複数の文章を読んで、共通するテーマや表現について考え、論じる問題が出題されます。
この関係で、高校入試でも、この「複数テクスト」を並行して読む力は、近年なくてはならない力となっています。
ここでやっているのは、まさにそれ。
物語と歌を結びつけ、「あっ、この歌詞、この物語にめっちゃ合う」と、自分で複数の言葉を関連づけているのです。
では、どうしてその歌詞が合うと思ったのかを書かせましょう。
もうこの辺で、ドーパミンダダ漏れです。
「だって、ここでおばみつは無惨との最終決戦で二人とも死ぬんです。けど最後に思いが通じて、来世では一緒になろうね、と言って息を引き取るわけですよ…!!! ここでね、私は『前前前世』を流したい。
なぜならね、二人はその後本当に生まれ変わって、二人で食堂やって、定食なんか出してるのよ! もう戦わなくていい平和な世界で、二人は穏やかに暮らしてる、暮らしていける。二人の死ぬ場面から、そんな幸せな未来へと繋がっていく世界でね、二人のアップからカメラが引いて、そのまま宇宙に登って、そこからイントロが始まるのよ!! 「遅いよ」と怒る君、ここで蜜璃ちゃんのふくれっつら、「これでもやれるだけとばしてきたんだよ」ここで伊黒さんの困り顔! くうぅっ!!さらにね」
早口のオタクトークが止まらなくなります。そのまま原稿用紙にぶつけてもらいましょう。
ここまで痛さ全開じゃなくても、この「動画として動かす力」は、文字を動かす力よりは圧倒的に彼らの得意分野です。
これに近いものは、程度の差はあれ、普通に文章書くよりも、ずっと強い回路として持っているはず。
そして私は、この力こそが、まだ学習指導要領で追いついていない、「これからの子どもたちに求める力」の正解ではないかと思っています。
国語の力として、今までの「読む/書く」だけではなく、「話す/聞く」にも重点が置かれるようになってきましたが、まだこれは大人の想定している限界を超えていません。
でも、これからの子どもたちはもっと縦横無尽に、これらの領域を行き来するのではないか。
話すことと書くこと、聞くことと読むことがぐちゃぐちゃに混ざった世界で、自分を表現していくことが求められるのではないかと思います。
歌と共にデザイン化され感情を表現する歌詞を読み、TikTokで動画を発信し、AIと会話して知識を得る。
その世代に合った自分の「想い」の表出方法についての一つの提言として、今回の投稿をしました。
まあ先生によっては「ふざけるな、ちゃんと書いてこい」と感想文を突き返してくるかもしれません。
でも、「読んだ」「しっかり考えて、自分の思いを書いた」という点で、これはきちんと評価されるべき文章だし、そこを評価できないのはもうその教師の側の問題なので、仕方ない。
そう割り切る、ある種の開き直りを、保護者の側にも持ってほしいということで、もう取り返しがつかないこの時期に、この投稿をしました。
今回思わしい評価につながらなかったとしても、自分の思いをきちんと原稿用紙に置くことができた、という体験は、必ず子供の力になるはずです。

コメントを残す